沖縄移住の経済性は「どこから給料をもらうか」で正反対になる
沖縄県の平均家賃は月 50,881円。全国平均の60,630円より約1万円安い。
ではその家賃は「安い」のか。それは、あなたがどこから給料をもらうかで正反対になる。
同じ家賃、負担は1.3倍違う
家賃負担率(平均家賃×12 ÷ 年収)を、収入の前提だけ変えて計算するとこうなる。 住む場所は同じ沖縄、払う家賃も同じ50,881円である。
| 収入の前提 | 年収 | 家賃負担率 |
|---|---|---|
| 沖縄県内で就職する | 393.5万円 | 15.52% |
| 全国平均の給与を維持して移住する | 527.0万円 | 11.59% |
| 東京の平均給与を維持して移住する | 644.4万円 | 9.48% |
| (参考)東京に住み、東京で働く | 644.4万円 | 16.44% |
| (参考)47都道府県の負担率の単純平均 | — | 12.55% |
県内で就職した場合の15.52%は、東京に次いで全国2位の重さである。 神奈川・千葉・埼玉といった首都圏3県より重い。
一方、本土の給与を維持できるなら11.59%で、47都道府県の平均を下回る。
同じ「沖縄移住」という言葉が、負担の重さで1.3倍違う2つの現実を指している。
なぜ割れるのか
家賃と年収が、それぞれ逆方向に効いているからである。
家賃は全国15位。「地方だから安い」ではない。全国平均より1万円ほど安いだけで、 47都道府県の中では中位より上にある。絶対額は東京(88,266円)の6割を下回るが、 沖縄より安い県が32ある。
年収は全国47位。 沖縄県の年収換算は393.5万円で、全国平均527.0万円との差は 133.5万円(−25.3%)。47都道府県で最も低い。
年収換算は「月額×12+年間賞与」で計算している。単純に月額を12倍すると、 賞与が抜けて2割前後過小になる。沖縄と全国の差は賞与で特に大きい。
家賃は中位、年収は最下位。この組み合わせが、負担率を全国2位まで押し上げる。 家賃の安さは、年収の低さで打ち消される。
県内で就職する場合、さらに効く2つの数字
負担率だけでは足りない。同じ方向に効く事実が2つある。
求人が少ない。 沖縄の有効求人倍率は2013年に0.53——求職者2人に対して 求人が1つ強しかなかった——で全国最下位だった。最下位は2021年まで9年続いた。 その後改善したが、2025年は0.97で全国(1.22)を下回ったままである。
IT職も全国比では2〜3割安い。 ソフトウェア作成者の年収は 沖縄446万円に対し全国574万円で、−22.4%。
ただしこの数字は、同時に反対のことも言っている。 沖縄の全産業平均は393.5万円なので、県内で見ればソフトウェア作成者(446万円)は 平均より50万円ほど高い。県内で就職するなら相対的には恵まれた職種である。
沖縄のソフトウェア作成者は4,490人。この規模なら平均値は比較的安定するが、 職種によっては標本が数百人しかなく、都道府県別の値は誤差が大きい。 「沖縄のSEの年収は◯◯万円」と一つの数字で言い切れる統計ではない。
本土の給与を維持する場合に効く、反対側の事実
負担率が下がるだけではない。年収を持ち込む前提だと、次も味方になる。
暖房費が存在しない。 那覇市の灯油支出は年2,203円で、全国15,094円のおよそ7分の1。 電気代も那覇市138,848円に対し全国149,965円で、沖縄のほうが安い。 単価は高いが、暖房が要らないぶん使用量が少ない。
残業が短い。 沖縄の超過実労働時間は月8時間で、全国平均11時間より少ない。 ただしこれは県内で働く人の統計なので、本土の給与を維持する人には当てはまらない。
借りて住むことが標準。 沖縄の持家率は42.6%で全国最下位。 賃貸で暮らす人が全国で最も多い県であり、この記事の家賃負担率という指標は 沖縄では実態をよく代表している。
この数字でできないこと
読み違えると結論が逆になるので、限界を先に書いておく。
- 年次が揃っていない。 家賃は2023年10月時点、給与は2024年。 県ごとの比較には使えるが、実額の家計予測にそのまま使ってはいけない。
- 家賃は「今払っている額」であって募集家賃ではない。 既存契約を含む平均なので、これから借りる人はもっと高い可能性が高い。
- 平均であって、あなたの年収ではない。 一般労働者・男女計・産業計の平均で、 女性比率や産業構成の県間差が混ざっている。「沖縄の会社は給料が安い」という 会社単位の話に短絡できない。
- 年収が低い理由はこのデータからは分からない。 産業構成・企業規模・非正規比率など 考えられる要因はあるが、裏づけるデータを持っていないので推測は書かない。
- 市町村差が大きい。 50,881円は県平均である。北谷町は66,429円、名護市は42,869円と 2万円以上開く。実際の負担率は住む市町村で変わる。
次に確かめること
この記事が言えるのは「収入源で経済的な意味が正反対になる」ところまでで、 移住すべきかどうかは言えないし、言うつもりもない。
自分の年収と住みたい市町村を入れて計算するなら、移住コストシミュレーターがある。 県平均ではなく市町村の家賃で計算するので、上の表よりは自分の条件に近い数字が出る。
沖縄県内で就職する前提なら、あわせて次も見ておきたい。
- 食料物価は全国1位で、東京より高い
- 待機児童は171人だが、申し込んだのに入れていない子は1,081人いる
出典
- 家賃・持家率: 総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」(2023年10月1日時点)
- 給与・職種別給与: 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」
- 有効求人倍率: 厚生労働省「職業安定業務統計」(年平均)
- 光熱費: 総務省統計局「家計調査」品目別・都道府県庁所在市別(2023〜2025年平均、二人以上の世帯)
家賃負担率(15.52% / 11.59% / 9.48% / 12.55%)と −22.4% は、 上記の統計そのものではなく、当サイトで計算した派生値である。計算式は本文中に示した。 出典の一覧と取得日は /sources/ にある。